小規模企業共済のメリットと活用法|節税と老後の備えを兼ねた資産形成ガイド

こんにちは、税理士の武田です。

 今回は、「小規模企業共済のメリットと活用法」を節税効果やiDeCoとの比較も踏まえて簡単に解説致します。

武田

この記事はこんな人におすすめ!

  • 従業員が20人以下の会社の社長や役員で節税を検討している方
  • 個人事業主の方で節税を考えている方
  • 将来の資産形成(退職金など)の方法を検討している上記社長や役員、個人事業主の方

小規模企業共済の概要

「小規模企業共済」は、中小企業の経営者や個人事業主などが引退後の生活資金を蓄えるための制度です。

経営者自身が老後の生活資金を積み立てるだけでなく、事業運営のリスクに備えた資産形成も兼ね備えた制度であり、国が推進する「中小企業基盤整備機構」によって運営されています。

中小企業基盤整備機構HPはこちら



この制度の大きな特長は、月々の掛金が全額所得控除となる点です。これにより、所得税や住民税の負担が軽減され、節税効果を享受しながら将来のための資金を積み立てることが可能になります。

掛金は毎月1,000円から7万円まで自由に設定でき、事業の収支や個人の生活に合わせて柔軟に変更可能な点も魅力の一つです。掛金の設定変更がしやすいことから、資金繰りに合わせて無理なく続けられる利便性も多くの中小企業経営者に支持されています。



この制度の大きな特長は、月々の掛金が全額所得控除となる点です。これにより、所得税や住民税の負担が軽減され、節税効果を享受しながら将来のための資金を積み立てることが可能になります。

掛金は毎月1,000円から7万円まで自由に設定でき、事業の収支や個人の生活に合わせて柔軟に変更可能な点も魅力の一つです。掛金の設定変更がしやすいことから、資金繰りに合わせて無理なく続けられる利便性も多くの中小企業経営者に支持されています。

節税対策としての重要性や利用の背景

小規模企業共済は、単なる資金積立だけでなく、大きな節税効果が期待できる点が重要です。

経営者や個人事業主の多くは、従業員のように年金や社会保険による老後の保障が充実していないことが多く、老後の生活資金や引退後の安定した収入確保は経営課題の一つです。また、事業の成長や将来の資金確保のためには、税負担の軽減策が欠かせません。

特に中小企業や個人事業主にとっては、税務上のメリットが事業の資金繰りに大きく影響を与えることが多いため、小規模企業共済のような制度の利用は、節税対策や財務の健全性を高める重要な手段とされています。

所得控除として直接税金の負担を減らせることから、所得の多い年に掛金を増額するなどの工夫も行えます。こうした柔軟な活用方法は、長期的な経営の安定と自己資金の強化につながるため、積極的な利用が推奨されています。

このような背景から、小規模企業共済は単なる老後の積立制度を超えて、経営者の資金計画やリスク管理の一環として多くの利点を提供するものとして、中小企業経営者に支持されています。

武田

実際に私が手続きをした書類が以下の契約申込書です。
「そろそろ老後資金や節税が気になるなぁ。」と思った段階で小規模企業共済の加入を検討することは非常におすすめです。

節税効果

小規模企業共済の最大のメリットは、節税効果です。月々の掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除されるため、所得税および住民税の負担を軽減できます。

具体的には、掛金を支払うことで課税所得が減り、結果として税金の負担が下がる仕組みです。この控除額が年々積み重なるため、長期的に見ると大きな節税効果を得ることが可能です。

さらに、経営者や個人事業主は従業員と異なり、退職金のような一時的な所得が発生する機会が少ない場合が多いため、引退時の資金準備においても有利です。

将来の生活資金を積み立てると同時に、現在の税金も減らせるこの制度は、事業収益を効率的に活用したい方にとって非常に有益です。

どれくらい節税できる?

課税所得が1,000万円の方が月7万円(年間84万円)小規模企業共済に加入したら年間どれくらい節税できますか?

年間で約36.7万円の節税となります。

課税所得が900~1,800万円の方の場合

  • 所得税33.693%、住民税10%の合計43.693%の税率がかされるため、84万円の約43%が節税額となります。
  • ご自身の具体的なシミュレーションは以下を活用ください。
    小規模企業共済共済金シミュレーション


老後の備え

経営者や個人事業主は、老後の資金を自分で確保する必要があり、小規模企業共済はそのための重要なツールとなります。

この制度を活用することで、国民年金や厚生年金だけではカバーしきれない老後の生活資金を、計画的に積み立てることができます。

また、長期的に積み立てた資金は、運用されて増加するため、老後に受け取る際の資金としても大いに期待できます。

中小企業経営者にとっての必要性

小規模企業共済は、中小企業経営者や個人事業主のために設計された制度であり、重要な財務ツールとなります。

経営者にとって、事業を引き継ぐ、あるいは廃業する際の資金を確保することは大きな課題であり、共済金はその際の備えとして利用できます。

退職金としても活用できるため、経営者が自分の生活を安定させるための資産形成を支援してくれる存在です。

加入手続きの流れ

小規模企業共済への加入は非常にシンプルです。以下が一般的な手続きの流れです。

加入手続きの流れ

加入申請書の提出
まず、商工会や商工会議所、または取扱金融機関(銀行や信用金庫など)で加入申請書を取得し、必要事項を記入して提出します。
加入資格の確認
申請内容に基づき、資格条件を満たしているかどうかが確認されます。加入対象者は、個人事業主や法人の役員などの中小企業経営者で、常時使用する従業員数や業種に一定の制限があります。
加入手続きの完了
資格確認が完了し、掛金の支払いが開始されると、加入手続きが完了です。毎月の掛金の支払いは、口座引き落としなどで簡単に行えます。
武田

実際の加入にあたっては、顧問の税理士に確認するか、ご自身で手続きする場合は以下のページをご参照ください。

掛金の設定

掛金は月々1,000円から7万円まで、1,000円単位で自由に設定することが可能です。

加入者は自身の事業の収支や経済状況に合わせて、掛金をいつでも増減できるため、収益の増減に応じた柔軟な設定が可能です。

また、一時的に資金繰りが厳しくなった場合でも、掛金を減額することで無理なく継続ができます。

事業の浮き沈みに影響されやすい中小企業経営者にとって、こうした掛金の調整機能は大きなメリットです。

注意点

小規模企業共済の利用には、いくつかの注意点があります。

小規模企業共済の注意点

掛金の引き出し制限

共済金の受け取りは、基本的には引退や廃業など特定の事情が発生した場合のみとなります。資金が必要だからといって簡単に引き出すことができないため、計画的な資金運用が求められます。

解約リスク

加入後すぐに解約すると、支払った掛金の全額を受け取ることができないケースがあります。契約期間に応じて受け取れる額が変わるため、途中解約には慎重さが必要です。

受取時の課税

共済金を受け取る際には、退職所得控除や公的年金等控除を適用して所得税が軽減されるものの、課税対象にはなるため、将来の税金対策も考慮することが重要です。

これらのポイントを踏まえることで、小規模企業共済の利用を最大限に活かし、事業の安定と将来の備えを確保することが可能です。

違い

iDeCoや他の共済との違い

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、個人が自分で年金を積み立てる制度で、積み立てた掛金は所得控除として税負担を軽減できる点で小規模企業共済と共通します。ただし、iDeCoの運用資金は金融商品での運用が必要であり、運用リスクを伴う一方で増減もあるため、投資信託や株式などへの理解が求められます。

他の共済(例:中小企業退職金共済制度(中退共))

中退共は従業員向けの退職金制度で、企業が掛金を負担し、従業員退職時に共済金として支払われる仕組みです。中退共は企業が従業員のために負担するものであり、小規模企業共済は経営者自身のための制度である点が異なります。

メリット・デメリット

小規模企業共済

メリット

  • 掛金が全額所得控除となるため、節税効果が高い
  • 運用リスクがなく、将来の資金を確実に積み立てることが可能
  • 掛金の設定が柔軟で、事業の浮き沈みに合わせて調整が可能

デメリット

  • 引退や廃業、解約など特定の事情がないと共済金を受け取れないため、自由度が少ない。
  • 短期間での解約は元本割れする可能性がある。

iDeCo

メリット

  • 掛金が所得控除の対象で、投資先を自己選択できるため、積極的な資産運用が可能
  • 受け取り時に退職所得控除や年金控除が適用されるため、将来の節税も期待できる

デメリット

  • 60歳になるまで引き出しが不可能であるため、急な資金需要に対応できない
  • 投資リスクが伴うため、元本割れの可能性がある

併用可能な制度

小規模企業共済とiDeCoは併用が可能です。

例えば、iDeCoで積極的な資産運用を行い、小規模企業共済で安全性を重視した積立を行うことで、リスク分散を図りながら将来の資産を多角的に形成できます。

このように、目的やリスク許容度に応じて使い分けることができます。

武田

法人の役員の場合はiDeCoの掛金上限が月額23,000円のため、金額を増やす場合は小規模企業共済と併用するケースがおすすめです。

資産の形成について

小規模企業共済の掛金は、国が運営する「中小企業基盤整備機構」が安定的に運用します。

投資リスクを負わずに積み立てるため、将来の資金計画が立てやすく、安全な資産形成が期待できます。

また、長期間積み立てることで複利の効果も生じ、引退時にはまとまった額を受け取ることが可能です。

受け取り方法

受け取り方法は、経営者が引退や廃業を迎えた際に選択できます。主な受け取り方法は以下の3つです。

受取方法の比較

一括受け取り

全額を一括で受け取る方法です。この場合、退職所得控除が適用され、所得税の負担が軽減されます。

分割受け取り(年金方式)

一定期間に分けて受け取る方法で、毎年の受け取りに対して公的年金等控除が適用されます。年金形式での受け取りは老後の生活資金として安定的に役立てることができます。

一括と分割の併用

一部を一括で受け取り、残りを分割で受け取る方法です。これにより、退職所得控除と年金控除の両方を活用し、税負担をさらに軽減できます。


これらの受け取り方法を自分の生活スタイルや老後の資金計画に合わせて選択できるため、老後資金の安定した確保が可能です。

小規模企業共済は、節税対策だけでなく、安心して長期的な資産形成を行える優れた制度であり、経営者にとって心強いサポートといえるでしょう。

武田

仮に、受取前に本人が亡くなってしまった場合、その共済金については受取の順位が決まっており、それぞれ配偶者、子ども、父母の順となります。また、生命保険の非課税枠とは別の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が用意されているのもポイントです。

解約時の影響

小規模企業共済を解約する場合、解約のタイミングや理由によって受け取れる金額が大きく変わる点に注意が必要です。解約は大きく分けて、以下の2つのタイプに分かれます。

解約のタイプ

準共済事由による解約

経営者の引退や廃業、病気による事業継続困難など、正当な理由がある場合の解約です。この場合、積立金額に応じて共済金が支払われ、受け取れる金額も比較的有利になります。

任意解約

正当な理由がなく、自分の都合で解約する場合です。このケースでは、掛金の積立期間に応じて解約返戻金(解約時に受け取る金額)が支払われますが、掛金の全額が戻るわけではありません。特に加入期間が短い場合、元本割れするリスクが高くなるため注意が必要です。


また、解約金の受け取りは所得税の対象となるため、受取金額によっては所得税や住民税の負担が増加する可能性があります。

解約時の税金負担は、解約理由や加入期間によっても異なるため、解約を検討する際は慎重な判断が必要です。

損失リスク

小規模企業共済を解約する場合の損失リスクには、次のような点があります。

損失リスク

元本割れのリスク

特に加入してから20年未満で解約すると、支払った掛金総額よりも解約返戻金が低くなる元本割れのリスクが高まります。これは小規模企業共済が長期的な資産形成を目指しているためで、途中解約にはペナルティが課される仕組みです。そのため、短期間の利用を目的とする場合には不向きな制度といえます。

早期解約のリスク

事業が安定しているうちに短期間で多額の掛金を支払い、早期解約を行った場合、積立金の一部が戻らないリスクがあります。小規模企業共済は老後資金の形成や引退後の生活資金を確保するための制度であるため、短期的な資金ニーズには適していません。

税負担増加のリスク

解約により一括で解約返戻金を受け取ると、その年の所得が増えるため、所得税や住民税が増加する可能性があります。解約のタイミングによっては、高い税負担が発生するため、将来の税対策も含めて計画的に検討することが重要です。

解約を考慮する際のポイント

解約考慮時のポイント

解約の必要性を再確認

解約する必要がある場合でも、分割受け取りや掛金の減額といった選択肢を検討し、資金を確保する方法を模索することが推奨されます。

代替手段の検討

事業が安定せずに解約を考える場合、一時的な掛金の減額や免除、あるいは事業資金を別途調達する手段を検討することで、長期的な損失を防ぐことができます。

小規模企業共済は、長期間の積立を前提に構築された制度です。解約は慎重に検討し、資金計画に合わせた活用が重要です。

小規模企業共済の利用価値

小規模企業共済は、中小企業経営者や個人事業主が将来の生活資金を計画的に積み立て、老後の安定を図るための非常に有益な制度です。

特に、掛金が全額所得控除となり、所得税や住民税の節税効果が得られる点は大きなメリットです。

また、引退や廃業時には共済金としてまとまった資金を受け取れるため、老後の生活設計やリタイア後の資金計画を立てやすくなります。

運用リスクを負わずに長期的な資産形成ができるため、リスクを抑えた堅実な資産運用を求める方にとっては非常に価値ある選択肢と言えるでしょう。

最適な選択方法と活用のポイント

小規模企業共済を最大限に活用するためには、自身のライフプランや事業計画に合わせた掛金の設定と、長期的な利用を念頭に置くことが重要です。

特に、短期的な資金調達には適していないため、安定的な積立を行うことが推奨されます。

また、共済金の受け取り方法としては、一括受け取り、分割受け取り、またはその両方の組み合わせが可能ですので、将来の収入計画や税負担を考慮した最適な受け取り方法を選ぶことで、資産を効果的に活用できます。

他の選択肢との組み合わせ

小規模企業共済と併せて、iDeCoや中退共など他の制度を活用することも有効です。

例えば、iDeCoで積極的な運用を行い、リスク分散を図りつつ資産を増やしながら、小規模企業共済で安全性を重視した積立を行うことで、資産の多角的な形成が可能です。

このように、自分のリスク許容度や老後資金の目標に合わせて制度を組み合わせることで、安心かつ効率的な資産形成が可能となります。

小規模企業共済は、経営者や個人事業主が事業の安定と将来の生活設計を同時に支える重要な制度です。長期的な視点で計画的に積み立て、他の制度も併用することで、節税効果と老後資金の確保を両立させた資産運用が実現します。

経営のリスク管理の一環として、小規模企業共済の利用をぜひ検討してみてください。

  • 相続税評価額の概算を自分で計算する方法は以下で解説しております。


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