所得税は高いの?安いの?
こんにちは、税理士の武田です。
今回は「会社の業績が良く、決算賞与が貰えそうなのだけど、税金どれくらいかかるの?」や「実家の土地を売却したけれど、税金どれくらいかかるの?」と悩んでいるひとは多いのではないでしょうか?
今回は、所得税の計算過程をシンプルに解説します!
この記事はこんな人におすすめ!
- 決算賞与など臨時収入が入りそうな人
- 土地や株式を売却した人
- 所得税の計算に興味がある人
所得税の計算は、大きく下記の2つに分けられます。
所得税の計算方法
- 所得によって税率が変わる「総合課税」
- 所得にかかわらず税率が一定の「分離課税」
今回は「総合課税」と「分離課税」のうち、総合課税について説明します。
考え方はシンプルなのでこの機会に是非税金について少しでも興味を持ってい頂けますと幸いです。
この記事を読めば、自分で「だいたいいくらくらい税金がかかりそうだな」という予測が立てられるようになり、今後の資産管理についても役に立つはずです!
それではどうぞ!
通常の所得税の計算はこれ!「総合課税」とは
総合課税は、給与や年金を貰っている人の税金を計算するだけでなく、個人で事業を営んでいる方や不動産を持っている方の税金を計算する時に採用する税金の計算方法です。
総合課税のイメージは上記の図の通りです。
総合課税を計算する4つのステップ
下記4つの流れを抑えるだけで総合課税に対する理解がぐっと深まります。
計算式や条文はあえて省いておりますので、是非参考にしてください!
総合課税4ステップ
- それぞれの所得を集計しよう
- 集計した所得を合算しよう
- 合算した所得から控除項目を控除しよう
- 所得税を計算しよう
順に解説していきます。
1.それぞれの所得を集計しよう
土地の売却や株式の売却など、一部の例外を除いてほとんどの収入は総合課税で税金の計算がおこなわれます。
そこでまず始めにその年1月1日~12月31日の1年間でどれだけ収入があったのか。
また、事業や不動産をしている場合は1年間の収入から経費を差し引いた所得がどれだけあったのかを把握する必要があります。
給与や年金は会社又は年金事務所から1月を目安に送られてくる源泉徴収票を使用します。
源泉徴収票には1年間の収入が記載されているため、所得税を計算する際にはその数字を使います。
事業や不動産賃貸業を営まれている方はご自身で収入と経費を集計し、1年間の決算書を作成する必要があります。
その他、保険金を受け取った場合や副業がある場合などはその金額も把握します。
事業や不動産については、3月15日の申告期限ギリギリになってから集計をはじめるととても大変なので、毎月こまめに集計しておくことが大事ですね。
2.集計した所得を合算しよう
1.で集計した所得を合算します。
このとき、赤字の所得がある場合は他の所得から差し引くことが可能です。
例えば、本業と不動産賃貸業を営んでいる場合で、本業は赤字だったが不動産賃貸業は黒字だった場合には、本業の赤字を不動産賃貸業の黒字と相殺することが可能です。
ただし、副業をしているような場合で、副業が雑所得に分類されるような場合は、副業の赤字と給与を相殺することは出来ないので注意が必要です。
副業が事業所得か雑所得かで損益通算の取り扱いが変わりますので、詳しい判断は税理士とご相談ください。
3.合算した所得から控除項目を控除しよう
所得の合算が終わったら各種控除項目を控除しましょう。
控除項目については、配偶者控除や扶養控除、障害者控除など人に関係するものと、社会保険や生命保険、ふるさと納税など、それ以外のものに分けられます。
認知症の方で障害者手帳を持っていない場合は、市区町村から
「障害者控除対象者認定書」を貰うことで障害者控除を受けられるため、要介護1以上の場合は役所へ連絡しましょう。
4.所得税を計算しよう
所得からの控除が終わったら所得税を計算します。
国税庁から公表されている所得税速算表は以下のとおりです。
現行の所得税は5%から45%の7段階に区分された累進課税が採用されております。
出典:国税庁 No.2260 所得税の税率
総合課税で所得税を計算する際の「累進課税制度」とは
ここからは所得税と住民税の合算税率を把握することで実際の税負担を確認します。
「累進課税」に関する理解
- 所得税住民税の累進課税を確認しよう
- 累進課税の考え方を確認しよう
- 実行税率と限界税率を確認しよう
順に確認します。
1.所得税住民税の累進課税を確認しよう
個人が所得に対して収める税金は所得税だけでなく、住民税もあります。
住民税は一律10%となります。
そのため、所得が195万円の場合は所得税5%、住民税10%の合計15%が税金となります。
せっかくなので、所得税と住民税の合算税率をグラフ化したものを
下記のイメージ図にて作成致しました。
2.累進課税の考え方を確認しよう
累進課税の考え方をここでおさらいします。
累進課税は上記の図で色分けしているとおり、それぞれの所得が一定ラインを超えると次の段階の所得税が課される仕組みになっています。
例えば所得が300万円の場合の税率について考えてみましょう。
この場合
所得が195万円までの分(緑色)ついては、15%の税率
所得が195万円から300万円までの分(青色)については20%の税率が課されます。
これを計算すると
(1) 195万円×15%=29.25万円
(2)(330万円▲195万円)×20%=27万円
(3)(1)+(2)=56.25万円
※復興特別所得税はないものとして計算
となります。
例えば所得が5,000万円の場合は
「5,000万円×55%=2,750万円が所得税住民税」
とはならないため、注意が必要ですね。
3.実行税率と限界税率を確認しよう
ここまで総合課税制度と累進課税制度を解説しましたがいかがでしたでしょうか。
最後に「実行税率」と「限界税率」の考え方を紹介します。
ここで一つ質問です。
-
100万円の経費を使った場合に、いくら税金が減るのか?
-
その人の所得によって減る税金は異なる。
これは「実行税率」と「限界税率」という考え方があるためです。
下記の図は所得が4,500万円の場合に、100万円の経費を使ったことを想定しております。
「所得(A)」「所得税(B)」をみると100万円の経費を使ったことで45万円所得税が安くなっていることがわかります。
所得(A) | 所得税(B) | 限界税率(C) | 実効税率(D)B/A |
4,500万円 | 1,545.4万円 | 45% | 34.3% |
4,400万円 | 1,500.4万円 | 45% | 34.1% |
100万円(差額) | 45万円 | 45% |
次に所得が190万円の場合に、100万円の経費を使うと・・・
「所得(A)」「所得税(B)」をみると100万円の経費を使っても5万円しか所得税が安くなっていません。
所得(A) | 所得税(B) | 限界税率(C) | 実効税率(D)B/A |
190万円 | 9.5万円 | 5% | 5% |
90万円 | 4.5万円 | 5% | 5% |
100万円(差額) | 5万円 | 5% |
上記の比較表から、所得が大きい時に経費をたくさん使い、
所得が少ないときは経費をなるべく抑えるのが節税策として有効なことがわかりますね。
まとめ
今回は所得税の累進課税について説明しました。
いきなり全てを把握するのは難しいので1つずつ出来る範囲から読み解いてみてください!
それでは、今回の内容をおさらいしましょう
通常の所得税の計算はこれ!「総合課税」とは
- 総合課税のイメージの確認
総合課税を計算する4つのステップ
- それぞれの所得を集計しよう
- 集計した所得を合算しよう
- 合算した所得から控除項目を控除しよう
- 所得税を計算しよう
総合課税で所得税を計算する際の「累進課税制度」とは
- 所得税住民税の累進課税を確認しよう
- 累進課税の考え方を確認しよう
- 実行税率と限界税率を確認しよう
総合課税の計算方法を理解し、納税予測と節税のタイミングを見極めましょう!
以上最後までお読みいただきありがとうございました。
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