死亡保険金を本来の受取人以外が取得した場合
こんにちは、税理士の武田です。
今回は、「保険証券に記載されている受取人以外の人が生命保険金を取得した場合に贈与税が課税されるのか」について簡単に解説致します。
この記事はこんな人におすすめ!
- 生命保険金の受取人を変更し忘れた人
- 生命保険金の受取人を誰にすればよいか悩んでいる人
- 既に生命保険金を受領してしまった人
事例
まずは、「保険証券に記載されている受取人以外の人が生命保険金を取得した場合」のイメージをつけて頂くため、2つの事例を紹介致します。これらの事例のケースではどのような税金が課税されるのかを考えてみます。
事例1
夫は先妻を受取人とする生命保険に加入していましたが、先妻は結婚してすぐ子供を授かることなく他界した。
その後、亡き先妻が受取人だった保険金が夫の死亡により先妻の相続人である先妻の親に振り込まれた後、先妻の親から後妻に保険金の振込があった。
事例2
夫が独身時代に加入した生命保険について、加入当時は夫の親を受取人とする契約を締結した。その後生命保険の契約者である夫は結婚し、子供も出来たが保険金の受取人を変更する手続きを失念していた。夫の死後、保険金が夫の親に振り込まれてしまったので、その保険金を夫の親から妻へ振り込んでもらった。
生命保険の非課税は適用できる?
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事例1の先妻が受取人の保険金や事例2の夫の親が受取人の保険金について、両親が保険金を渡さずそのまま持っていた場合、生命保険の非課税の規定は適用できますか?
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生命保険の非課税は
- 500万円×法定相続人の数=非課税限度額
となる制度ですが、非課税の規定は相続人が取得した死亡保険金に限定されているため、今回はどちらのケースも非課税の規定を適用することはできません。
さて、事例1事例2どちらのケースも
- 保険金を実際に受け取った者から後妻や妻が保険金を取得しているため、贈与税課税あり
- 単に受取人の変更を忘れていたので、本来の取得者は夫と生活を共にしていた後妻や妻のため、贈与税課税なし
という2つの異なる考え方がありそうですが、どちらの解釈が正しいでしょうか。
法令の確認
通達の確認
このような事例のケースについては、相続税法基本通達3−12を確認してみましょう。
この通達は、相続税法基本通達3-11で、「保険金受取人」とは、「その保険契約に係る保険約款等の規定に基づいて保険事故の発生により保険金を受け取る権利を有する者をいうものとする。」という原則的取扱いに対する例外的な取扱いとして定められております。
ちなみにこの通達は、大阪高裁昭和39年12月21日判決の「保険証券に受取人として記載された名義人が形式的便宜的に指定されたにすぎない」とした判示を受けて定められたものです。
保険金受取人の変更は、保険契約者の一方的意思表示のみで効力を生じ、保険会社への通知は必要ない(最高裁昭和62年10月20日判決)という判例もありますね。
結論
結論
したがって、保険契約上の保険金受取人以外の者が保険金を受領しても、その者が実質的な受取人であれば、贈与税の課税はなく、本来の受取人として取り扱われることになります。
つまり、今回のケースでは、事例1の後妻、事例2の妻どちらも本来の受取人として生命保険を取得することができ、贈与税の課税はありません。
さらに、どちらの場合も保険金取得者が相続人に該当するため、相続税の非課税の規定の適用を受けることが可能です。
注意点
この取り扱いは保険金受取人の名義変更の手続がなされていなかったことにつき、やむを得ない事情があると認められるなど、保険金を取得した者がその保険金を取得することにつき相当の理由があると認められるときに限られるため注意が必要です。
保険会社はあくまで保険証券上の受取人に保険金を支払い、税務署提出の支払調書にもその旨を記載して提出しますので、税務署から問い合わせがあった場合はきちんと説明をすることが必要です。
相当の理由がない場合
たとえば、事例2のケースのように時の経過とともに夫が結婚し、子供を授かったような場合など、保険契約時の契約者とその保険金受取人の親族関係などに変化があり、保険金の受取人に変更があると想定される場合は問題ございません。
しかし、何らの相当な理由がなく、受取人から他の親族などに支払われた場合には、保険金の請求は受取人固有の財産とされますので、贈与税の対象となります。
保険金の受取人変更の手続きはすぐに出来ますので、気づいたときにすぐ変更するのが最もよい方法ですね。
まとめ
今回は死亡保険金を本来の受取人以外が取得した場合を紹介しました。
保険契約書に記載されている者以外が保険金を取得したとしても、やむを得ない理由があると認められる場合は実際の保険金受取人として認めれ、贈与税課税がないことを確認できました。
それでは今回のおさらいをしましょう
保険の受取人などについてご質問があればいつでもご連絡ください。
保険の受取人は気づいたときにすぐ変更するのが本当におすすめです。
誰を受取人にするかで相続税の金額も変わってきますので、受取人を決める際はご相談ください。
- 相続税評価額の概算を自分で計算する方法は以下で解説しております。
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